鏡の中に映る他人

http://x51.org/archives/000416.html
 カプグラ症候群の話。
 受け取った情報を適切な記憶とリンクできないために、鏡を見ても自分と認識できないようだ。

Queens在住の几帳面な老婆、ロザモンドも同じ問題を抱えていた。鏡の中の人物と自分との相違である。彼女の場合はまた特殊である。彼女が鏡の中で向き合う女性、その女性は彼女の旦那の事を奪い取ろうとしている女性であり、明らかにその女性はストーカーであるとロザモンドは考えたのである。

 治療の方法はさまざまだ。

「ある時、ロザモンドの旦那が気づいたんだけど、ロザモンドはメイク用のコンパクトミラーを見た時に限っては彼女が嫌悪するその女性を見ていないという事に気づいたんだ。」Feinsberg氏はそこから着想し、徐々に鏡を大きくしてみる方法を試したという。

 情報と記憶が一致しないこと自体は、普通の人にもありえる。

「我々は時として、良く知る人について急に「違う人」だと感じるようになることがある。実際のところは我々の中に持っているその人についての情報とその人自身が食い違うからだ。あるいは、時として誰かに対して非常に腹を立てたり、がっかりさせられた時はその人の事を今までとは違う目で見るようになるだろう。そして次にはあの人は変わってしまった、と考えるようになるわけだ。でも実際のところその人はその人に変わりはない。ただ、我々の内部の情報が変わっただけなんだ。」
「例えば、こういうシチュエーションはないだろうか?あなたが新しい靴を買った時に、古い方の靴を見る。あなたは何故そんな汚い靴を六ヶ月間も履いていたのかもはや分からないだろう。しかし、実際にはその古い靴は脱ぐ前と全く変わっていない。あなたの中でその靴に対する感情が変化しただけだ。」
「例えば夢に出てくる普段知っている人の性格が現実と違ったり、いつも暮らしている自分の部屋やオフィスにいるのに、それが現実のそれらとは全く違ったりね。」

 人間の認識というものは、当人が思っているよりもしっかりとしていないようだ。

「一つの結論として、我々のアイデンティティというのは我々が想像する程には厳密でも、また正確でもないと言う事だろう。しかしまた、我々は常に”我々の身体はどこからどこまでなのか?そして我々は世界の中の何者なのか?”といった感覚を常に修正しようと考える傾向があると言う事ではないだろうか。そして実際、我々のアイデンティティというのは常に変化の中の一定の状態であって、同時に常にそれは変化しているんだろうね。」Feinsberg氏は語った。

 まぁ人は反響や手ごたえで想像の修正をするところがあるからね。
http://www.ojiisan.co.jp/party/122639.html
 これがオチだったりする。ゴホゴホ。
 そういえば無関心というのも、考えてみると面白いかもしれない。利害や好悪・好奇心がなければ、人は最初の印象だけで判断しそうであり、感覚の修正など行われないんだろうな。