星新一の制約

書く題材について、私はわくを一切もうけていない。だが、みずから課した制約がいくつかある。
その第一、性行為と殺人シーンの描写をしない。希少価値を狙っているだけで、べつに道徳的な主張からではない。もっとひどい人類絶滅など、何度となく書いた。
第二、なぜ気が進まないか自分でもわからないが、時事風俗を扱わない。外国の短編の影響ででもあろうか。
第三、前衛的な手法は使わない。ピカソ流の画も悪くないが、怪物の写生にはむかないのではないだろうか、発想で飛躍があるのだから、そのうえ手法でさらに飛躍したら雑然としたものになりかねない。私の外観はぼそっとしているが、精神的にはスタイリストであり、江戸っ子なのである。
(創作の経路)