感情移入

 短編マンガにおける感情移入は共感や憐憫からくるものではないようです。

主人公が正しいかどうかではなく、いかに強い圧迫を受ける立場にあるかが大事

 読者はプレッシャーを受ける立場の人に思わず思い入れしてしまう傾向があるようです。サスペンス描写にはこのような理由もあったのですね。
 収録されている高橋留美子さんの短編はこのあたり上手く表現しています。段取りを追っていくとこうなります。

1)禁則事項、タブーを提示する
2)禁則事項を破ったものがどうなるか、ペナルティを提示する
3)摘発者(圧迫する者)が登場する
4)主人公は禁則事項に関してどちらの立場でもない
5)主人公は禁則事項を破ってしまい、追われる立場になる

 ここで重要なのは4まで登場人物の感情の動きが全くないことです。主人公が禁止事項を破ったときに主人公の感情が動くことによって、読者はその感情にひきつけられるのです。
 上記の1から5までの段取りはそのまま他にも応用が利きそうですね。