修正前の文章

No.117  From 社長(古川)

「○○さんからの返信への返信です」


昨日ある漫画家の方の弁護士さんがお話しがあるとの事でまんだらけに来られました。
何日か前にその漫画家の方からお電話を直接頂き、
「そちらで私の漫画原稿が売られている様なので、とりあえず差し止めて欲しい」
と要望を受け、それを受け入れました。
その後またすぐにその方の弁護士さんから同じ事を申し入れられ、
「もうすでに差し止めてあります」
とお答えしました。
翌日その弁護士さんから再びお電話があり、
「ホームページを拝見しました、確かに掲載されていませんね。お店の方では売っていないんでしょうね?」
というお問い合わせがあり、
「お店の方でも差し止めてあります」
と申し上げたのです。
それから2,3日たっての御来社でした。

その弁護士さんのお話は開口一番、
「あの原稿は○○先生のものです、返して頂きたい」
と言うものでした。
原稿の所有権はこちらにあるからすみやかに返しなさい。
あなた方には所有権はない・・・という事なのでしょう。
もちろん私はお返しする気でいたのですが、その後
「それでどうすればいいのですか」
とお聞きになるのです。
でもそれは私が逆にお聞きしたい事でした。
お話があるというので時間をとってお待ちしていたのに、
どうすればいいのかはないと思うのです。
とにかくそれ以上のことはおっしゃらず、
「どうしたらよいのか」
の一点張りでした。
そこで私は、
「それでは一度キチンと漫画家さんとお話をさせて下さい」
と申し上げたのです。
弁護士さんは、
「先生はお忙しいので・・・」
とおっしゃいましたので、確かにその通りなので、
「お電話でも結構です」
とお答えしました。
1時間も喋ろうとは思っていないのです。
5分か10分あればよいと思っています。
一度キチンと御本人とお話をしておかないといけない問題だと感じたのです。

さて前置きが長くなってしまいました。
納得の行かない私の応対にお怒りかもしれませんが、もう少しお付き合い下さい。

まんだらけには毎日様々な品が持ち込まれます。
おそらく5万から10万点位でしょうか。
もちろんその中には漫画家さんの原稿もあるのです。
それも皆さんが想像しておられるよりも多くの量が取引されているのです。
昨日も原稿まるまる二作品分が入って来ました。
この丸々一作品という制限を取れば、ほとんど毎日のように原画、原稿の入荷はあるのです。
今回問題になっているのは、まんだらけが盗品を売ったかどうか・・・あるいは盗品とわかっていて売ったかどうかが焦点になっているのでしょうか?
どうもその辺りもハッキリしませんが、もしそうならキチンとお答えしておきますが、その様な事はありません。
私達はこれまでも現在もそういうことで、訴えられた事も現在係争中の事件もありません。
毎日大量に扱っているから、神経が麻痺しているのではないかという考え方があるかも知れませんが、私達は商法にのっとりキチンとした買い取り方をしております。
この事に関して何ら問題はないと思っております。

いや問題はない訳ではないのですが、複雑なのです。
私がこのビジネスを始めてずっと考えて来たのは、
「どうしたらこの立派な日本の文化たるマンガ・アニメの世界を本当にそう呼べるようになるのか」
という事でした。
今回はやっと世間的に少しは問題化してきていますが、何故今までもこうした事が頻繁にあったにもかかわらず放っておかれたかという事があります。
これまでまんだらけは多くの出版社の方達と原稿返却のお話し合いを致してまいりました。
そのほとんどがスムースに行われたかと申しますと、私はそうは思っておりません。
漫画家の方と出版社の方達はダイレクトにお話しが出来るのに、私達はどうしても出版社の方を通すか、弁護士さんを通して漫画家の方達とお話しする機会がないのです。
まんだらけはお金が欲しいのだろう。原稿の代金を払うから返しなさい」
それですべてが終わるのでしょうか?
それでこれまでは終わっていたのです。
しかしこれからもそれでいいのでしょうか?
私はずっと腑に落ちない思いでおりました。
そしていつか機会があればキチンとした話し合いを漫画家の方達としてみたいと思っていたのです。
まず何故そんなに大切な漫画家の原稿がホイホイ世の中に流通するのでしょうか?
出版社の管理がずさんなのでしょうか?
編集者に悪い方がいるのでしょうか?
原稿専門の盗人がいるのでしょうか?
そういうシンジケーションが存在するのでしょうか?
まんだらけが売るからなのでしょうか?
まあ色々出しましたが、私が最大の原因と考えているのは、
漫画家の怠慢・・これが一番の原因と考えています。
この辺りは相当漫画家の方達から反論が来るかも知れませんが、あえて今言わせていただきたいと思います。
実は単純に「漫画家の怠慢」でもないのです。
そこには非常に巧妙に操作されたカラクリがあるのですが、まあそこまで申し上げなくても、もう少し現代の漫画家さん達には独立心の自覚と、本当に原稿が大切な物ならば、そういう風に原稿を扱う意識が必要だと思うのです。
今の日本のマンガ・アニメは多くの優秀な漫画家、編集者、読者によって築き上げられて来ました。
そこには編集者と漫画家の絶妙なコンビネーションがあったことも事実です。
しかし今日に至って、出版社(編集とはまた別)は大切なコンテンツ製造者である漫画家さん達を独占するために様々な手管を用意しています。
私はそれは企業がやることですから別にどうこう言うつもりはないのですが、ただそこから派生する多くの矛盾に皆さんが気づいていなくて、しかもそれがこれから世界に発展して行こうというマンガ・アニメ文化を阻害している事がどうにもがまんならないのです。
このまま話し続けると、版権問題や新刊が売れない問題(新人漫画家が食えない問題)に話題が移行してしまいますので、少しお話を戻しましょう。
出版社が漫画家さんの原稿をお預かりしたならば、預かり書を発行すべきですし、漫画家の方達もキチンとした契約を結ぶべきです。
「いやもう長い付き合いだし出版社に全部任せてあるから」
そうおっしゃるなら出版社が原稿をどうしようと文句は言えないはずです。
一般社会人なら当然そうあるべきではないでしょうか。
どこかの出版社の新人賞を取ったばかりの漫画家さんなら、いやいや新人賞をとれば立派なものですから、そうではなく編集者さんのお情けで、たまたま穴があいた所の埋め原稿でデビューしたという新人さんならいざ知らず大家、大御所といわれるような方達なら堂々と出版社とそうした契約は交わせるはずですし、そうすべき社会的な義務(漫画家のステイタスの向上という意味からも)があると思うのです。
ところが実際はそうしたずさんな原稿管理をしておいて、返却されなくても、なくなってさえも騒がないでおいてですね、
まんだらけが売っていたんだと、とんでもない奴だ!盗っ人め!」
では私達はうかばれません。

ここからまた別の問題が始まります。
それでは何故まんだらけでこうした原稿が売られていたのでしょうか?
いまこうして書いている途中でも現実にすでに私は何十万かの原稿を買っているのです(今日は土曜日ですので少し多いのですが)。
今回のように問題になる原画原稿はおそらくまんだらけが取り扱う量のおそらく1パーセントもないと思います。
じゃあ1パーセント以下なら盗品(今回のものも盗品とは決まっていないのですが)を扱ってもいいのか、と言われるとそれは(NO)でしょう。
しかしここが問題です。
まずは盗難品であるかどうかの選定ですが、これはかなり難しいものです。
単純に、
「漫画家の原稿が市場に出るはずがないのだから、持ち込まれる物はすべて盗品だろう」
とまあそんな風に考える方は少ないと思いますが、いらっしゃらない事もない訳です。
世界は自分達だけで回っている状態の人達ではお話にならないのですが、盗品でない漫画家の原稿なるものも皆さんが思っていらっしゃる以上に沢山世間には埋もれているのです。
そうしたものの多くはまんだらけの流通網が出来はじめて、初めて少しずつ世間に流通し出したのです。
これまでの原画・セル画等の流通はいわゆる(ヤミ)で行われ、その多くが逆に盗品だったろうと想像されます。
それでどれだけ多くの漫画家の原稿・原画がヤミに消えていった事でしょう。
それは(ヤミ)であるが故にまったく問題にならなかったのです・・・出版社や漫画家が問題にしない限り。
しかしまんだらけは買い取った原画・原稿はほとんど公開します(ほとんどと申し上げたのは売る方の事情から公開して欲しくない・・・もちろん盗品ではありません・・・という事もありますが)。
そういうシステムから問題がある原画・原稿が発見される場合があります。
今回の件はそういうものでしょう。
しかし今回に限って申し上げますなら、あの多くの原稿は、まんだらけ仕入れなければどこかでヤミで取引されたか、あるいはわけの分からない所で眠り続けていたか、最悪廃棄されていただろうと思います。
盗品と分かっていて公開するバカがいるでしょうか?
私達は買い取りに最善を尽くしますが、その上であえて(公開)という光を当てる事によって、出来る限り問題を無くして行こうと考えているのです。
その上で問題があるのなら私達はもちろん修正いたします。
しかしその問題の多くは他にあるのではないでしょうか?
今回私はその事を言いたいのです。
私達はこのまんだらけ流通システムに誇りを持っています。
まだまだ至らない所は沢山ありますが、ポスシステムも順調に稼動し始めております。
買い取りも近代化して、ダイレクトなコンピューター入力システムも導入しております。
こうした事によりこれまで一点一点の商品情報が曖昧だった物がすべて明確に確認出来るようになって参りました。
今回この様な問題が浮かび上がって来ましたが、しかし作家さん達の対応はこれまでと変わっていないのです。
ですが冒頭で述べましたように、今お話しようとしている漫画家さんは社会派マンガの大御所です。
私もよく読ませて頂いている方ですので、お話すれば必ず分かって頂けると確信しているのです。

何故冒頭で弁護士に対して私があのような応対をしたのか書きます。
まずあの弁護士さんは出版社御用達の弁護士さんだと思われました。
あるいは出版社に紹介(漫画家さんが)された弁護士さんかも知れません。
初めから横柄な態度で、まるでこちらが犯罪者であるかのような扱いでした。
とてもその漫画家さんの代理人ではなかったのです。
もしそうなら私はもうお会いしたくないですね。
そこで
「どんな条件なら返してもらえるのか?」
と訪ねられましたので、
「直接漫画家さんとお話させて下さい」
とお願いしたのです。
私は今回の問題をいつものように出版社任せにして、「悪者はまんだらけ」にしておいて、お金で解決・・・はいおしまい・・にはして欲しくなかったのです。
「ひょっとしてこの漫画家さんなら分かってくれるのでは」
そういう思いがありました。
漫画家さん自身にこの問題に取り組んで欲しかったのです。
もちろんお忙しい身でしょうから、せめて5分10分でもお電話したかったのです。
果たして出版社御用達の弁護士さんは、漫画家さんにちゃんと伝えてくれるでしょうか?
でもあまり甘い事も言っていられないのです。
本当に真剣に漫画家さんが自分達の問題として受け止めない限りは、この後再びこういうことは繰り返されるでしょう。
誤魔化していてはダメです。
本当の問題が何処にあるのか、今真剣に考えて欲しいのです。
それは作家さん達だけではありません。
読者も同じです。
編集者も販売者もです。
私達は全員で、これまでの日本のマンガ文化を築き上げて来たのです。
その市場に未だヤミが存在します。
まんだらけに限って言えば、
「版権問題」
「新刊売れない問題」
「万引き問題」
ですが本来こうした問題は新刊屋さんが何とかすべき問題なのですが・・・
今回はこの事には触れませんが、こうした問題もすべて悪いのは自分達ではないという被害者意識を装い、(問題意識を真剣に考えない漫画家さん達)を巻き込んだ出版社の問題だと私は思っています。
ここで私はちょっと漫画家さんを甘やかしていますが、やはり漫画家(特に大御所)さんにも責任が大きいと思います。
先生、先生と呼ばれ続け感覚がどうかなってしまっているのでしょうか?
貸本劇画の時代、原稿はすべて買い切りという感覚で取り扱われていました。
ですから読者プレゼントなどには、水木しげるの原稿の断片が送られて来たりしたのです。
白土三平氏が「原稿はすべて返しなさい」とした時、劇画界に衝撃が走ったといいます。
今はそれから何十年も経つのです。
どうして今これだけ強い立場にいる漫画家さん達が、出版社の言いなりなのでしょうか?
本当にこれまで何度となく原稿返却という行為を繰り返して来ました。
しかしその時、
「やっとこれでこの大切な原稿が戻って来た、ありがとう」
と言って下さったのは、この世でたった一人松本零士さんだけでした。
他は皆様うわべはあからさまではないにしても決して好意的な応対ではなかったのです。
私は法律的に所有権がどうのこうのと言っている訳ではないのです。
そういう問題は裁判所ででもやればいい事でしょう。
私はそこまで持ち込むまでもなく、作家さんが作家さんの原稿を返して欲しいとおっしゃればお返しいたします。
しかし迷惑をこうむったのはどちらでしょうか?
そして何が原因でそうなったのでしょうか?
よく考えて頂きたい問題です。

ああまだまだお話したい事は山ほどあるのですが、もう時間がありません。
また疑問点ございましたら、ご連絡下さい。
有難うございました。

Ps:この文章を目安箱に掲載しようと思っているのですが、よろしければ○○さんのメールものっけてよろしいでしょうか?
ご連絡お待ちしております。