柳生連也武芸帖五巻(最終巻)を購入する。
御前試合の帰路、連也は久しぶりに十兵衛と出会う。
十兵衛は執着を捨て去っていた。
連也、その姿に感銘を覚える。
後に女性への執着をも捨てた連也はひたすら修行に励み、十兵衛の域へと到達する。
……この後が詩的で面白い。
だが、めざすべき対手が消えたわけではなかった。
ある日、三日前の自分が挑戦してきた。
おそるべき強敵だった。
遅れはとれなかった。
その自分をやっと制覇し了(お)えたと思えた時、また三日前の自分が現れた。
日毎、三日前の自分を対手に剣の道を探りつづけたが――
三日前の自分の幻影を制するには――
今の自分の心を鍛錬するしかなかった――
この漫画は、ツッコミを入れようと思えば入れれないこともない。
しかし一人の剣者としての凄まじい生涯。
また敢えて血生臭さを省略しない強烈な劇画。
それらが作者の主張に、説得力を持たせるのだ。
私がこのような物語を好むのは、私の中であやふやになっていることや、あるいは既成概念をぶち壊して、説得されてみたいと思っているからなのかもしれない。