贈与者と援助者

 基本的に贈与者はただで助けてくれるわけではない。主人公は試練を受け、褒章に援助者を獲得する。援助者の力こそ、主人公の獲得した不思議な能力とみなされる。
 社会がまだ狩猟体制だったころ。ヤガーは森の守護者である。彼女は主人公を助ける森の動物を派遣する。この場合、贈与者はヤガー、援助者は森の動物である。
 農耕体制が確立すると、男が社会を支配するようになる。贈与者はヤガー(母系社会の象徴)に加えて、祖霊・死んだ父親(いずれも男系社会の象徴)が登場する。祖霊は豊穣をもたらす。死んだ父親は、供養されることによって主人公に援助者を派遣する。主人公を援助するのは、馬である。
 時には何の縁もない死者を葬ることによって、援助者を獲得することがある。
 娘が主人公の時は、母親が贈与者になる。主人公を援助するのは、人形である。
 食べられる(死すべき)運命であった動物を助けることによって、援助者を獲得することがある(助けた動物がその動物の主であるときもある)。この場合、贈与者=援助者である。社会体制の変化により、援助の根拠が支配関係から友情に変わっていった。
 馬以外の援助者も当然存在する。援助者は遠方・上方・深みに侵入する能力を持っている。鷲などの鳥(自然の主に由来する)や特別な力を持った名人(射手・早足・鍛冶屋・きき目・勘の鋭い者・舵手・泳ぎ手など)がそうである。