昔話の深層

 昔話の深層 河合隼雄 福音館書店
 10年ぐらい前に買った本。
 昔話に対する学問のスタンスの違いがなかなか興味深いので引用する。

マックス・リューティーは「民俗学は昔話を文化史的・精神史的ドキュメントとして研究し、社会におけるその役割を観察する。心理学はその物語を心的過程の表出として考え、聞き手あるいは読者への影響をたずねる。文芸学は昔話をして昔話たらしめるものを確認しようとつとめる」と述べている。

 河合隼雄氏はユング精神分析家である。(プロフィールより)
 心理学は昔話を使って、現代人の心理にアプローチするというスタンスを取っている。よって、昔話を作った人・伝えた人と現代人には理解しあうところが多いと考えているようだ。この点「魔法昔話の起源」とは異なってる*1
 また「昔話は自己実現の過程を反映するものである」という河合氏の主張は一貫しているのだが、昔話に出てくるモチーフを片っ端から意識・無意識の二つに分別するのはどうかと思う。意識・無意識という言葉が便利すぎるのではないだろうか。
 昔話について三つの見方があるようだが、一方だけの視点で語るのは不足であるような気がした。

*1:社会制度の変遷によって理解できないことが出てくる、というのが「魔法昔話の起源」の主張するところである