福祉ネットワーク シリーズ ネット依存 なぜ抜け出せない?

http://www.nhk.or.jp/fnet/koho/407tue.html
 18歳のときにオンラインゲームにハマリ、一日のほとんどを仮想世界で過ごしてきた22歳男性、彼の姿を通して、ネット依存について考える、という内容である。
 彼の主張はこのようなものである。
 やればやるほど、自分のキャラクターに返ってくる。現実世界より、仮想世界のほうが、自己実現ができる。仮想世界の仲間とのコミュニケーションは楽しい。
 一日中PCの前に過ごし、昼夜逆転の生活が続いた。
 親の説得やカウンセラーによる治療は難しいようである(まだよくわかっていないのだろう)。
 しかし彼はあることをきっかけに現実の世界に復帰する決意をする。それは22歳という節目が、(大学に通っていた)同級生の就職につながることに気がついて、あせりが生まれたからである。
 彼は以前通っていたフリースクールの先生に助けを求めた。以前彼は就職したがうまくいかなかった。そのことを踏まえて、恩師は彼にこれまでのことを本に書くように勧めた。想定する読者は、ネット依存の子を持つ親である。彼は責任ある仕事に挑戦することとなった。
 だいたいこのような内容である。
 番組では、「仮想世界より現実世界のほうが楽しい、と彼に気がつかせるようにする」などと結論づけていた。
 しかし人にもよると思うが、現実世界より、仮想世界のほうが楽しいと感じている人が、オンラインゲームにハマっているのだ。
 私が気になったのは、彼がどのような経緯で現実世界に戻ろうと思ったか、ということである。
 彼にとって仮想世界の友人より、現実の友人の変化のほうが気になるようだ。自分のキャラクターが他人に認められ、優しさに満ち溢れたユートピアと刺激あるイベントに満ち溢れたゲームも楽しいだろう。しかし彼が現実世界に戻ろうと思ったきっかけは、彼自身と現実世界の友人の比較からくる、あせりだった。
 現実世界が気になるきっかけは、おそらく人それぞれだと思う。彼は競争社会に馴染めず、仮想世界に逃避した。しかし彼をまた現実に戻させようとしたきっかけは、彼が彼自身と同級生とを比較していることであった。
 これは競争社会を非難しているわけではない。
 思考が競争社会に浸かっているならば、やはり競争社会なりの脱出法があるかもしれない、と私は考えただけのことである。