おとなの小論文教室。

http://www.1101.com/essay/2003-08-13.html

先日、平田オリザさんの『演劇入門』を読んでいるとき、
この言葉に、くいっと胸をつかまれた。

「伝えたいことなど何もない。
 でも表現したいことは山ほどある」

これだ! と想った。

それは、ベルリンの壁がくずれ
いまの演劇には、伝えるべきテーマ、つまり、
主義主張や思想、価値観など、何もないのだということ。

でも、個人の内側には、
自分の内面にある混沌とした想いに、
何らかの形を与えて、外に表したいという衝動が、
とめどなくあふれ出ているのだと。
「私に見えている世界」、「私に聞こえている世界」を、
ちゃぷっとつかまえて、
ありのままに外界に向けて示したい。
それをありのままに記述するのが、
いまの演劇だということが書かれていた。
そういう要求なら、演劇をやらない私にも、
常にあると想った。

つまり、自分の内面にあるもやもやに形を与えたい。