弟切草のその前に

わたしはこの<ゲームブック>というかたちの中に、他の媒体(小説や、映画や、テレビや、舞台)では表現し得ない「ドラマ」を作り得る、無限の可能性を見た。そういうまったく新しい「ドラマ(ゲームドラマ)」を作って、世間をあッといわせてみたかった。わたしは熱く燃えた。「作ろう!」この程度の<ゲームブック>に夢中になっていた子供たちがぶッ飛ぶような、面白い<ゲームドラマ>を作ってやろう!
長坂秀佳術 長坂秀佳著 辰巳出版

 長坂秀佳氏は大陸書房に話をつけ、さらにNHKの冒険ラジオドラマと組ませてゲームブックを作ろうとした。しかし断りきれない脚本の依頼がきて、コラボレーション計画は頓挫する。
 次にゲームブックはあきらめて、エニックスと組んでゲームドラマの企画を立てようとするがこれも事情があってリタイア。
 そのあとチュンソフトを紹介され、行き詰まっていた「弟切草」という企画の助っ人になった。
 こうして「弟切草」は誕生した。ノベルゲームの記念碑である。
 このあとゲームブックはフェードアウトする。大陸書房も、倒産してしまった。運命のいたずらを感じるのは私だけだろうか。
 長坂秀佳氏のゲームブックをこのまま埋もらせたままにしておくのは、もったいないと思うんだけどなぁ…。