主人公に感情移入をさせる必要はない

(観客に理解できない登場人物に関して)こうした映画では、観客は人物に対して感情移入するのではなく、自分とは異なる人間の自分のそれとは異なる人生を疑似体験しているのだ。
(実話ベースのホラー作品の場合)必要なのは、「こういう人間はいる」という確かな感触なのだ。

 感情移入がなくても恐怖は伝わるのだろう。
 ちなみにハリウッドリライティングバイブルには、感情移入についてこのようにかかれている。

観客が登場人物に感情移入できるかどうかは、感情的反応を見ることができるかどうかにかかわっているのだ。観客と登場人物の一体感は感情的反応から作られる。観客をストーリーの中へと巻き込むものは登場人物の感情であり、観客は登場人物の感情を通して、自分のことのように登場人物の旅を経験するのだ。

もし主人公がゴールを達成するために充分な努力を払おうとしないならば、誰もその主人公に感情移入したりはしないだろう。

 感情移入の条件について、私の考察がイマイチなのでなんともいえないが、観客・読者を感情移入させるには、登場人物の過去を語るなど、相当な容量が必要になるのではないだろうか。だがもともと映画には容量が定まっているから、感情移入についてはさほど重視していないのだろう。