今回は「吉野家の経済学」という本を紹介する。
 日経ビジネス人文庫 安部修二・伊藤元重
 安部は吉野家ディー・アンド・シー代表取締役社長。
 伊藤は東京大学大学院経済研究科教授である。

  • 値段を変えるということは、システムを変えること

 値下げで客数は増加した。
 その客数を回していくためには従業員の教育・訓練やシステムやインフラの合理化などが必要である。
 つまり大幅に値段を下げるということは、組織改革につながるということである。

 急激な店舗展開に材料と人材が不足した。
 肉やたれなどのの品質を落として対応するしかなかった。
 さらに一杯300円から350円に値上げした。
 吉野家のブランドは大きく崩れ、倒産した。

 新会社を設立させようとする勢力がやってきて、本部は重苦しい雰囲気に包まれた。
 そんななか、隔離されていた社長が会社更生法をダメ元で申請、これが受理される。
 まず今までの吉野家ブランドを維持するという姿勢が決められた。
 さらに給料を支払って人材を確保し、外部の人間(弁護士など)の意見から既成概念を取り払い、わずか3年9ヶ月で全額返済した。

 まず「商品は飽きない」という非常識から出発する。 商品の魅力はバラエティの多さではないという信念。
 飽きさせないためにどうするのか、主力商品を固定した上で消費者が何を求めているかを考える。 そこからシステムを作っていく。

  • まとめ

 客が持つ吉野家への信頼が、ブランドである。
 ブランドはクオリティと、それを意識した人間と人間関係によって形作られていく。
 ブランドと客の求めるものをできるだけ近づけていく。
 吉野家がずっと牛丼を作っていく必要はない。
 例えばソニーなどは、トランジスタラジオ・ウォークマン・ビデオデッキ・パソコン・プレイステーション2など商品を変えてきた。
 つまりブランドのみが永遠である。